コロナ禍で貧富の差が縮小した、という記事がオーストラリアの新聞に出ていた。
ヘッドラインとしては、なかなか興味深い感じだけど、よく見てみたら「それって時間軸を考えたら、あんまり意味がないのでは?」と感じる内容だった。
物事をみるときに、どの視点で見てみるか、中長期に向かって行く中でどういう分岐点が存在して、どういう経路に進むのか、それで将来予測が大きく変わる、ということを実感。
具体的には、コロナが発生したことで多くの政府は家計に対して給付金を支給した。その支給された給付金を低所得層は貯蓄、またはローン返済に充てたことで、貧富の差が縮小した、ということらしい。
つまりは、
下限の所得階層の人々の資産の増加、または負債の減少でネットした資産は増加した、
一方で、上限の所得階層の人々は支給金もらっても、全資産に占めるインパクトは小さい、
かつ、中間所得層の人々は支給金をもらって、貯蓄、返済に充てた家計もあるが、消費に回した家計もある、
ということで、レンジの下限が引き上がったので差が縮小した、ということなのだろう。
ここで疑問に思ったのは、支給金は一時的なもので継続されないのであれば、その効果は一時的にしか出てこないし、正常化した後は、中間から上位の部分はまた引き上がっていくので、結果は元に戻るのでは?という点。
あと、低所得層が貯蓄をしたとしても、将来的にはその貯蓄は消費に回るので、中間層以上の貯蓄に比べて、消費に回る可能性が高いので、結局は資産増加へ寄与する部分は低いのでは?という点。
短期的に見れば、確かに格差縮小に影響しているた、補助や支給が継続されないのであれば、一時的な効果にしかすぎず、恒常的に格差を縮小するような動きにはつながらないのだろう。
これは、低所得層が貯蓄をしても資産増加に影響しない、という経路を考えた場合だけど、他の経路として、低所得層が貯蓄を行い、その貯蓄を正常化した後も保持できるのであれば、貯蓄から生まれる金融所得が低所得層の資産を増加させ、その好影響が複利効果で生まれるのであれば、下限の引き上げには効果をもたらすので、将来的にミクロで見た家計では格差縮小になるかもしれない。
これは前提として、上位層の資産の増加が限界的にしか発生しないという、かなり厳しい前提があるので、マクロで見たら格差縮小にはつながらないだろう。
でもって、この頭の体操を何に活かすのか、と考えてみると、
資産を持つものはより一層裕福になり、それによって得られた可処分所得をどこに消費として回すのか?と考えてみる。
高額商品の消費に回る麺が多いので、いわゆるブランド品を扱っている会社、ブランド会社は安定的に儲かるのか。
低所得層が中間層に引き上がると生活水準の引き上げに応じて、中間価格帯の商品が売れるようになるので、中間価格帯に車とか商品を製造している会社の業績が上がるのか。
というような話になるのかなぁ。
とはいえ、中間所得層というのが、インフレや資産状況の分布の変化によって推移していくので、絶対金額で測ることは難しいことには注意が必要だろう。
実際に日本で年収1000万円は高所得にはなるが、生活水準によっては中間層にしかならないことを考えると、絶対額で測ることは難しいし、中長期的な生活水準の選択によって見え方が変わるということだろう。
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