ニュージーランドの銀行は寡占状態

ニュージーランドの商業委員会(公正取引委員会)が、銀行業界に関する報告書の草案で、豪4大銀行がニュージランド内で寡占状態にあって、それ以下の銀行は競走に参加できない、ということらしい。

4大銀行が、市場シェアの大きな部分を握っていて、それ以下の小規模銀行は勝負にならない状況になっているということらしい。4大銀行が相手の出方を見て、価格水準を決定する状況「プライスマッチング戦略」になり、市場シェアを安定的に確保している、という評価。

競争を促すために、政府系のキウイバンクの資本増強を行い、価格破壊を行い、競争環境を健全な状況に持ち込もうという提言を政府にするらしい。
確かに、寡占状態から競争状態に持ち込むには、体力のある競争者が市場に参加して、寡占を行っている企業に立ち向かう必要があるので、どれくらいの寡占常態化によるが、大きな資本が必要になるだろう。

オーストラリアも実質的に4大銀行が寡占状態で市場シェアの70%などを握る状況が続いている。最近でこそ、マッコーリ銀行が出てきているという話がニュースで流れているが、とはいえ、基本的なシェアの構造は一朝一夕で変化することはないので、4大銀行の基盤は盤石な状況に見える。

崩れるとすると、住宅価格が大幅下落して貸し倒れが拡大するなど、金融全体が厳しい状況に置かれない限りは、自然体で寡占状態を競争状態に持っていくことは難しいだろう。

ニュージーランドのことを想像してみると、
政府系の銀行が資本増強を行い、価格競争を仕掛ける、それにより市場シェアを4大銀行から一部獲得したとする。獲得するためにどれくらいのコストが必要になるのか、そおコストが資本増強によるコストよりも大きくなる、というのであれば良いが、そんなに簡単にはいかないような気がする。

価格競争を仕掛けるということは、低いコストでの資金が必要になるが、資本増強の場合はコストは相応にかかる上、商品で低価格競争を仕掛けるならば、仕入れと収益でのバランスが取りにくい状況が発生するだろう。
増資で賄った場合は資本コストを上回る収益が必要になるが、利益率を下げて競走に入るのであれば、量で勝負する必要が出てくるのは。預金金利を少し上げたからといって、預金者がそれほど簡単に預金口座を移すのか?という点には疑問がある。

金融リテラシーが高い人は資金移動をする可能性があるが、差異が明らかに大きくぶれないのであれば、口座を解説して、資金を移動させるインセンティブが湧きにくいだろう。

そうなると、資本増強したからといって、寡占状態をどれくらい競走状態に持っていけ得る余地があるのか?という疑問がある。増強した部分のコストが、新たに獲得した収益に対して見合うものなのか?政府系だからコストが安いので、収益率が低くても、競走環境が生み出されることで要件を達成したと考えるのか、どこにどれくらいの意図があって、効果をもたらしていくと予測しているのかが気になるところ。

一般的には競争が促される方が消費者にとっては良いので、競走環境を作り出そうとする行動は理解できる。一方で、あまりに競争が激しく、低価格競争に陥ると、どこかの段階で競争環境に耐えられなくなって脱落していく会社が出てきて、一旦は競争環境が出来上がっても、体力がある会社か効率的に運営できる会社のみが市場に残って、次の寡占状態を生み出しながら進む可能性もあるのか?

それでも競争がなく、寡占状態で一部の企業が超過利潤を必要以上に取って、社会全体の厚生を引き下げているのであれば、競争環境を作り出して、技術革新などを促す方が社会全体の厚生を将来的には引き上げることになるのだろう。

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