鉱物の価格変化で鉱山業は厳しくなる

ニッケル鉱山を開発している企業が、オーストラリアのニッケル鉱山を閉山するというニュースがあった。鉱山の権益は半年前くらいに取得したのに、早々に閉鎖することを決めており、その背景はニッケル価格が暴落したから、ということ。
見込んでいた収益がないのであれば、閉山して操業コストを抑える方がトータルでは良い、という判断なのだろうが、権益購入時の費用も考えると大きな損失を抱えることになるのだろう。

キャッシュフローを回すために、とりあえず収益がなくとも動かし続けるという選択ではなく、閉鎖して運転自体を行わない方が良い結果になるということは、運転するコストで多少なりとも入るキャッシュフローよりも、権益買付時の借入金のコストなどの方が安いという判断が働いたということで、どれほど高い価格を見込んでいたのか、どれくらい安い金利で資金を調達できているのか、どっちなのだろう。

そもそもニッケルってどういうところで利用されていて、なぜ価格が高騰して、その後に暴落しているのだろうか、ということをさらっと見てみると、
利用は合金を作るときに利用されていて、ステンレスよりも要求が厳しい用途である、ガスタービンや電池関連にも使われているらしい。
電池の利用に使われる部分が多いとすると、EVや再生可能エネルギー関連の蓄電池の材料などに利用されているのであれば、世界的な潮流から需要が大幅に増加して、価格が高騰した理由は想像に難しくない。

一方で、暴落した原因は何なのか?と見てみると、供給過剰があるということで、インドネシアでもニッケルが取れるらしく、そのコストも安いので価格が下落していったということらしい。
確かに値段を見ると2020年から上昇を始めて緩やかに上がる中で、2022年前半に一瞬で暴騰して、その後も上下を繰り返していても高い水準(2020年の上昇開始前から見ると2倍の水準)で推移した後に、価格が下落し始めて、現状は2021年の年平均の水準くらいの戻っているように見える。

冒頭の鉱山閉鎖に関して見ると、半年前に権益を買っているということは、その半年くらい前にキャッシュフローを計算していたならば、現在の価格の1.5倍くらいの水準が継続するとみて買収したのかと想像する。
それが60%水準くらいになって、さらに下落傾向が見えそうであれば、操業停止するには十分な理由になるのだろう。

技術が進む中で同じ機能を持たせるために利用する金属が変化していけば、価格が下がる可能性もあるだろう。一方で、代替する金属がなければ、一定の価格で存続するのだろう。
今回は価格が上昇したことで、採掘が進み、供給が増加して、価格の均衡水準が下がっていった、ということを考えると、石油やシェールガスと同じように価格が上がると採掘コストを賄えて、供給に繋がり、価格が下がる、という流れなんだろう。
結局、採掘コストの安いところが生き残って、コストの高いところは価格がコストを賄うまでは動かない、という選択になるだけ。

代替金属が見つかれば、今度はニッケル自体が他の用途を探せるまでは厳しい状況は変化しないということだろう。
技術と材料の関係で、古くから使われている材料を新しい製品に向かわせる技術改革に資金は向けられるのだろうか?あまり経済的な面白みがなさそうであれば、ほっとかれる金属になる可能性が高そう。

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